「原音再生」総論草稿

原音再生についてオーディオ評論において色々論じられてきましたが、たまには西洋哲学史を踏まえて考え直してみましょうか。


そもそもオーディオにおける「原音」とは何かを考えるに、常識的には録音時の生演奏がオーディオにおける「原音」と言えることに異論はないでしょう。どの席に座って聴いた音かどこにマイクを置いたかとかは議論をシンプルにするために考慮の外に置きます。


で、生演奏=「原音」とすると、その生演奏の正確な再現が High Fidelity=高忠実度 再生の目標となるわけですが、ハイファイ性能の高さを売りにするスピーカー・アンプ・プレーヤー等から成るオーディオシステム毎にその再生音がそれぞれに異なることを我々オーディオファイルはよーく知っています。


なぜこのようなことが起こるのか?原音は1つであるはずなのにその再現 が多様であるのはなぜなのか?ハイファイ性能が足りないからか?


違います。再生システムが異なるからです。・・当たり前だよと言う声が聞こえます笑。


ここで、彼の議論を踏まえていなければ哲学の議論とはとても言えないほどに西洋哲学的にはあまりにも常識過ぎる、しかし哀しいかな我が国のオーディオ評論ではまず滅多に言及されないどころか踏まえられてすらいないドイツの哲学者 イマヌエル・カントの主要著作の1つである『純粋理性批判』等を参照してみましょう。


オーディオがその目標とする「原音」は、演奏が既に終わっているわけですからオーディオがどれだけハイファイ性能を高めたとしても決して文字通りの再現はできないものです。というより、演奏は勿論終わっているがその終わってしまった演奏を聴きたいからこそ我々はポータブルなり据置なりバジェットなりハイエンドなりのオーディオを用意するわけで、つまり


我々オーディオファイルがその演奏を聴くためにはオーディオを使わざるを得ないという現実がある。そして我々はオーディオを利用してしか、既に失われてしまったが確かに存在していたはずであろう原音に触れられないわけですから、


オーディオは我々にとって演奏を聴くという経験に先立たざるを得ない。つまり経験に先立つという意味でオーディオは再生音楽鑑賞経験にとってカント言うところの「ア・プリオリ」な形式に類するものと、録音された音源を聴取する経験に関しては言い得るかと思います。強引なアナロジーに過ぎませんが笑。

※ 直観、概念 




とすると、ア・プリオリな形式たるオーディオを通してしか既に終わっている生演奏を知覚できない人間にとって、その再現を目指す「原音」はカントに倣えば「物自体」と言える。そしてカントによれば物自体は知りえない。エーリッヒ・アディッケスの主張に拠るまでもなく演奏自体が「存在する」ことは完全に客観的な事実ですが、我々に知りえるのは我々がオーディオを通して初めて知覚できる演奏である「現象」に過ぎません。



通常の認識において人間は個別の経験に先立つ=ア・プリオリな主観的形式によった「現象」だけを認識できます。しかしその現象の背後にあるはずの、現象をもたらす原因となった何かは物自体として人間は決して認識しえない。


これをオーディオに転用すれば、「原音」が物自体に相当し、原音再生をその目的とするオーディオは再生音という「現象」を我々にもたらすだけであり、決して原音それ自体を再生することはできない。


とすると、オーディオファイルができることあるいはしてきたことというのは、「システム毎に原音を現象させること」と言える。


以上をもっと分かり易くかつ分析的に整理してみましょう。


(1)生演奏=原音
(2)マイク
(3)録音・制作
(4)記憶媒体
(5)オーディオ
(6)再生音
(7)鑑賞


(1')=人間の主観に関係なく客観的に存在する「物自体」

(2')~(5')=それぞれの選択にそれぞれに関わる人間の主観が関わらざるを得ない

(5')音楽鑑賞経験に先立つ「ア・プリオリ」な形式

(6')=「現象」

(7')鑑賞者は(5')のア・プリオリな形式をア・ポステリオリに笑自らの意思で自在に変更できる。


オーディオの醍醐味はまさに(7')にこそあるわけですが、


(5')オーディオ機器自体にその企画・開発段階において企画・開発者の主観的形式が投入・反映されていますから、オーディオという趣味はそれに関わる人間達が能動的に形成する「ア・プリオリ」の交響曲と言えるでしょう。



以上総論の草稿。


店員S田でした。












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